「教派神道」研究会(仮)

おおむね近代神道・神道教団について

RIRC(宗教情報リサーチセンター)教団データベース更新

以前にも教団情報を調べるのに有益なサイトとしてご紹介したことのある
https://kyohashinto.hatenablog.jp/entry/2023/06/25/180000
宗教情報リサーチセンター(RIRC)の教団データベースが、2024年になって新しくなっているのに今更気づきました。
https://rirc.or.jp/database/?page_id=68588
元々1998~2013年に作られた旧データベースがあって、2014年に新しくなり、10年経ってさらに新しく更新された新データベースと統合されたということです。
ぱっと見、2014データベースから移行された教団情報のうち情報量が減ったものがあるように思われますが、体裁を整えるなかで削られたのでしょうか。
今までなかった教団の情報も追加されていますので、ぜひ見てみて、参考になさってください。

6/11林淳ゼミオンライン大学院「柄澤照覚の神誠館と高島暦」

6月11日、愛知学院大学の林淳先生による「オンライン大学院」か、「柄澤照覚の神誠館と高島暦―易・暦書出版と宗教の接点―」『國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所年報』第16号(2023)をテーマに開催されました。
暦・占いと出版、教派神道を結びつけるという著者による発表のあと、暦研究者、近代神道研究者をふくむ参加者により、活発な質疑応答が行われました。

特集展示「教派神道の祭祀と行」國學院大學博物館

國學院大學博物館神道展示室にて、特集展示「教派神道の祭祀と行」が令和6年6月23日まで開催されています。
これは教派神道連合会共催のミニ展示です。教派神道連合会が主催し國學院大學に委託していた神道講座が、1967年に第16回からの中断を経て2015年に再開したことから、それにあわせて毎年開催されています。

これまで毎年次のようなテーマで各教派から資料を集めて、展示が開催されてきました。
2015「教派神道の教祖と儀礼
2016「登拝と行」
2017「教派神道の教祖(創始者)たち」
2018「教派神道皇典講究所國學院大學
2019「三条教則と教派神道
2022「教派神道創始者たち」
2023 企画展「祓-儀礼と思想-」の一部
2024「教派神道の祭祀と行」
教派神道連合会の加盟教派は12ありますが、どの回も全ての教派の資料が並ぶわけではなく、テーマによってさまざまな組み合わせで教派が選択されているようです。
今年は修成派と金光教を除く9教派の資料が並んでいるのを、見学してきました。
展示目録なども作成されていないので、見学の感想としてざっと思い出すままに挙げておきましょう。

御嶽教 登拝装束
扶桑教 登拝時の鈴、御伝え(経本)
神理教 十種神宝、神符ほか呪い占い関係資料
大本 歌祭装束
神道大教 教団作成の祭式行事作法教本
黒住教 祝詞
神習教 大正期の神前結婚式テキスト
禊教 沼部春友『神道祭式の基礎作法』みそぎ文化会
実行教 『実行教神拝御恩禮詞』

装束や祭祀・祈祷に使う立体のものと、教本や祝詞などの平たいテキスト類で構成されています。
そのもの自体の作られた時期はまちまちですが、いずれも現在まさに用いられているもので、各教派の今のあり方の一端を伺うことができます。時代に合わせて修正を加えているという神道大教の祭式作法や大正期に著されて現代まで受け継がれているという神習教の結婚式祭式など、時代と祭祀の関係もそれぞれで非常に面白く拝見しました。

かなり世間の興味をひいているようで、國學院大學博物館の旧Twitter(現X)アカウントが告知ポストをしたところ、8.8万回表示1300を超えるいいねを集めています。それだけ教派神道について知りたいというニーズがあるということでしょう。
とはいえ、3mくらいの壁面ケース2面と1.2mとかの覗きケース2面しかないので、ほとんど一教派1点です。「これで教派神道を勉強するぞ」と思うと肩透かしと感じるでしょう。
しかしながら、上に書いたように毎年開催されていますから、ぜひ毎年ご覧になっていただきたいものです。

「教会設立における所属教派選択の事例」民族文化研究会関西地区第66回定例研究会

令和6年3月24日に開催されていたという民族文化研究会関西地区第66回定例研究会での研究報告「教会設立における所属教派選択の事例」の発表要旨が、同会ブログに掲載されていましたのでご紹介します。

https://minzokubunka.hatenablog.com/entry/2024/04/23/131518

本発表は、神道教派の傘下に属した経験を持つ3つの教会・教団をとりあげ、ともすれば本家教団側の制度・性格等に求められがちな傘下教会の教派選択について、まさに多様な理由や事情で行われてきたことを論じます。
また、戦後に十三派体制が解けた後でも教派の傘下に入る入らないは、それぞれの事情によって多様であるとするのも重要な指摘でしょう。
これまで教派神道史は教団史・制度史として研究が蓄積されてきた部分があるなかで、個別の教会史から積み上げる教派神道史研究を展望しており、非常に興味深い。

発表者は公表されていませんが、同会の会誌『大八洲』に近代・教派神道関係の論文を毎号多数寄稿されている竹見先生でしょうか。
本発表も論文として読めるのを楽しみですね。

本会(仮)主催・巡検企画「墓から見る近代神道」

教派神道」研究会(仮)では、令和6(2024)年3月1日午後に、「墓から見る近代神道」と題して巡検を企画・実施しました。
谷中霊園青山霊園などの都立霊園には、明治維新後、神式による葬儀の増加により整備された墓地であるという経緯から、国学者神道家が少なからず埋葬されていることが知られています。しかしながら、150年の歴史を重ねる中で、被葬者の相続人・親類縁者が縁遠くなり管理から手を引くケースが増えているものと思われます。また、東京都では、2000年代から「公園型霊園」として再整備するため、使用料の払われていない箇所の無縁仏への改葬が進められており、著名人の墓巡りの名所としての都立霊園もその様相を変えつつあります。国学者神道家においても例外ではなく、先には、谷中霊園において国学者・小中村清矩の墓が整理されたことが話題になりました。
そうした事情を踏まえて、1874年(明治7年)に東京府管轄の公共墓地として開設された青山霊園を会場とし、国学者神道家の墓や碑を訪ねる巡検を実施したものです。
巡検といってもお墓参りをしてその人物について語り合う程度の軽いもので、国学神道にご興味の方々約10名の参加を得ることができました。
企画者も別に詳しいわけではないテーマでしたので、参加者のなかからそれぞれの国学者神道家についてご存じの方にお話いただきました。37箇所ほどリストアップしましたが、流石に半日ではまわりきれず、後日改めて2回目の企画をしてもいいかもしれません。また、同じように谷中霊園での開催も考えておりますので、皆さまのご参加をお待ちしてます。

『宗教研究』第82回学術大会紀要特集号PDF公開

日本宗教学会の『宗教研究』第97巻別冊(第82回学術大会紀要特集号)のPDFが公開されています。

http://jpars.org/bulletin-separate_volume.html

当該大会は2023年9月8日(金)~10日(日)東京外国語大学を会場に対面開催されたものです。
リンク先のファイルをご覧いただくとお分かりになると思いますが、教派神道をふくむ近世神道・近代神道関係の発表が第5部会にまとまっていました。
いずれも大変興味深い内容で、論文化も待たれます。

教派神道関連研究が2023年度日本宗教研究諸学会連合研究奨励賞に

日本宗教研究諸学会連合というと聞いたことがあるようなないような、公式サイトによれば「日本宗教研究諸学会連合とは、2008年に設立された宗教を研究する諸学会の連合組織です(加盟学会数30団体 2016年現在)。」という組織なのですが、そこが毎年「宗教研究分野の個人・共同研究プロジェクトのうち、独創性、実現可能性、予想されるインパクトにおいて際立ったものを表彰」している研究奨励賞に、現在教派神道連合会にも加盟している大本をテーマとした研究が選ばれました。
https://jfssr.jp/?page_id=537&fbclid=IwAR3Nk9rNdfD3vlhWWaZPjhXivLrx-vU0pmQsRDiKcmcLGBSNxOz54ETG8tA_aem_AcdnQrqxcpkJ-jykG3e46DK1HwNNlmPRGWIEeSZ-_-PMBR9VmeFpjycPv1zJspbli-0
東京工業大学博士後期課程の玉置文弥氏の「アジア主義超国家主義と宗教-道院・世界紅卍字会大本教の連合運動-」です。
玉置氏の研究については以前にも本ブログで言及したことがあるはず。
玉置氏は近年、かなり精力的に研究成果を発表されてており、アジア主義超国家主義と道院・世界紅卍字会大本教について研究を大きく前進させていらっしゃいます。またその成果もいろんな賞を受賞しており、今回の受賞も宜なるかなという感想。
先日博論発表会を終えられたばかりらしいので、そのうちまとまった博論本を書店で目にすることができるでしょう!

授賞者は玉置氏のほかにもうお一方いらして、髙瀬航平氏の「公教育を巡る文部省の政策過程の検討を通じた近代日本の宗教・政治・教育の関係史研究」なのですが、こちらも大変興味深いご研究です。

お二方、おめでとうございます。