いざなぎ流・陰陽道研究で知られる佛教大学歴史学部教授の斎藤英喜氏が9月4にくも膜下出血・脳幹出血によりお亡くなりになりました。
https://ameblo.jp/susano-saito/
今年5月に上咽頭癌の治療のため入院されましたが、7月には治療を終え退院されていました。退院後すぐに高知県立歴史民俗資料館でのトークショーをなさったあとコロナ陽性で再入院されていましたが、無事退院され、これから少しづつ日常生活にお戻りになるやにお見受けしていたところです。
近年は「異端神道」をキーワードに、山下文夫・斎藤英喜編『神道の近代 アクチュアリティ問う』(勉声出版、2023)、同編『平田篤胤狂信から共振へ』(法藏館、2023)などで近代神道を問い直すようなプロジェクトをいくつも進めておられ、これらについては本ブログでも取り上げてきました。
謹んでお悔やみ申し上げます。
教派神道研究は「2023年歴史学界回顧と展望」にどれだけ載ったか
『史学雑誌』133編 5号 (2024.6)が刊行されました。もちろんブログ管理人は史学会の会員ではありませんから、その辺の本屋や図書館で見ました。
さて昨年は、教派神道研究は「2022年歴史学界回顧と展望」にどれだけ載ったか- 「教派神道」研究会(仮)
https://kyohashinto.hatenablog.jp/entry/2023/07/01/100000
というエントリーをあげていました。
今回はその最新版「2023年歴史学界回顧と展望」特集号を見てみようという趣向です。
関連しそうな論文は近現代の「思想」と「宗教」に取り上げられているようです。
昨年に続き図書館の立ち読みなので溢れていたらご容赦。
まずは平田篤胤関係の論集の刊行が続きましたので、そこでのものですね。一つは山下久夫・斎藤英喜編 『平田篤胤 狂信から共振へ』(法藏館、2023)、もう一つは『現代思想2023年12月臨時増刊号 総特集=平田篤胤』(青土社、2023)です。どちらも「思想」「宗教」の項で取り上げられていて、存在の大きさを感じさせます。
また、個別の論文としては木村悠之介「新神道とは何であったか−メディア排宗教運動としての雑誌『日本主義』」『國學院大學研究開発推進機構紀要』第15号(國學院大學研究開発推進機構、2023)が注目されるところです。
その他、下村育世「 奈良弘暦者・吉川家の近代−陰陽師の身分喪失と暦師の家業継続」『国立歴史民俗博物館研究報告』240号(2023)も多分こんご教派神道・近代神道に関連して興味深いお仕事だと思います。他にも武田幸也「近代の神宮大麻理解」『神社本庁総合研究所紀要』第28号(2023)や藤本頼生「「国家ノ宗祀」の解釈と変遷について」『神社本庁総合研究所紀要第28号(2023)など近代神道史的に重要っぽい論文も紹介されていました。
ブログ管理人も2023年には宗教史・神道史に関わる論文を書いていて、別に「回顧と展望」に取り上げられるようなクオリティの論文ではなかったということなんですが、ここはひとつ「エポックメイキングな論文だったが史学雑誌がどこに分類すべきか分からなかったために埋もれてしまった」と思い込んで、今年度も張り切って参りたいと思います。
金光教第5代教主金光平輝師帰幽
令和6年7月21日未明、金光教第5代教主金光平輝師が帰幽されたという。
http://web-konkokyo.info/data/n1721544570
師は1934年10月31日岡山県岡山市生まれ。
父であり4代教主であった金光鑑太郎帰幽をうけて行われた教主選挙で選ばれ、1991年(平成3年)から教主に就任。2021年(令和3年)に退任されるまで6期30年にわたって教主を務められた。
8月29日(木)13時30分から本部広前祭場にて本祭が斎行されるとのこと。
RIRCチャンネルで教派神道のニュース解説
井上順孝センター長が宗教関連ニュースを解説する宗教情報リサーチセンター(略称RIRC)公式YouTubeチャンネルの「宗教ニュースを読み解く」で、教派神道に関する話題が取り上げられました。
神道修成派が教主職を新設~教派神道の多様性~「宗教ニュースを読み解く」No. 34
https://youtu.be/8-mFgGIkE2A?si=0Ar11dFeN5rsM8dd
(概要欄から転載)
2024年3月6日、神道修成派は管長職に加え新たに教主職をもうけ、新田純子氏が初代教主に就任しました。神道修成派は新田邦光により戦前の神道十三派の中で黒住教とともにもっとも早く一派特立しました。十三派はかなり性格が異なりますが、その中で禊教と実行教に焦点を据えて、どのように形成され展開して現代に至っているかを國學院大學日本文化研究所共同研究員の荻原稔氏と今井功一氏をゲストに迎え説明してもらっています。
荻原氏は井上正鐡を教祖とする禊教の研究をライフワークにしており、今井氏は富士信仰に基盤を持つ実行教の活動を調べています。井上順孝センター長が神道修成派と教派神道全体の概要を説明したのち、二人から禊教と実行教の特徴について説明してもらっています。
RIRC(宗教情報リサーチセンター)教団データベース更新
以前にも教団情報を調べるのに有益なサイトとしてご紹介したことのある
https://kyohashinto.hatenablog.jp/entry/2023/06/25/180000
宗教情報リサーチセンター(RIRC)の教団データベースが、2024年になって新しくなっているのに今更気づきました。
https://rirc.or.jp/database/?page_id=68588
元々1998~2013年に作られた旧データベースがあって、2014年に新しくなり、10年経ってさらに新しく更新された新データベースと統合されたということです。
ぱっと見、2014データベースから移行された教団情報のうち情報量が減ったものがあるように思われますが、体裁を整えるなかで削られたのでしょうか。
今までなかった教団の情報も追加されていますので、ぜひ見てみて、参考になさってください。
特集展示「教派神道の祭祀と行」國學院大學博物館
國學院大學博物館神道展示室にて、特集展示「教派神道の祭祀と行」が令和6年6月23日まで開催されています。
これは教派神道連合会共催のミニ展示です。教派神道連合会が主催し國學院大學に委託していた神道講座が、1967年に第16回からの中断を経て2015年に再開したことから、それにあわせて毎年開催されています。
これまで毎年次のようなテーマで各教派から資料を集めて、展示が開催されてきました。
2015「教派神道の教祖と儀礼」
2016「登拝と行」
2017「教派神道の教祖(創始者)たち」
2018「教派神道と皇典講究所・國學院大學」
2019「三条教則と教派神道」
2022「教派神道の創始者たち」
2023 企画展「祓-儀礼と思想-」の一部
2024「教派神道の祭祀と行」
教派神道連合会の加盟教派は12ありますが、どの回も全ての教派の資料が並ぶわけではなく、テーマによってさまざまな組み合わせで教派が選択されているようです。
今年は修成派と金光教を除く9教派の資料が並んでいるのを、見学してきました。
展示目録なども作成されていないので、見学の感想としてざっと思い出すままに挙げておきましょう。
御嶽教 登拝装束
扶桑教 登拝時の鈴、御伝え(経本)
神理教 十種神宝、神符ほか呪い占い関係資料
大本 歌祭装束
神道大教 教団作成の祭式行事作法教本
黒住教 祝詞集
神習教 大正期の神前結婚式テキスト
禊教 沼部春友『神道祭式の基礎作法』みそぎ文化会
実行教 『実行教神拝御恩禮詞』
装束や祭祀・祈祷に使う立体のものと、教本や祝詞などの平たいテキスト類で構成されています。
そのもの自体の作られた時期はまちまちですが、いずれも現在まさに用いられているもので、各教派の今のあり方の一端を伺うことができます。時代に合わせて修正を加えているという神道大教の祭式作法や大正期に著されて現代まで受け継がれているという神習教の結婚式祭式など、時代と祭祀の関係もそれぞれで非常に面白く拝見しました。
かなり世間の興味をひいているようで、國學院大學博物館の旧Twitter(現X)アカウントが告知ポストをしたところ、8.8万回表示1300を超えるいいねを集めています。それだけ教派神道について知りたいというニーズがあるということでしょう。
とはいえ、3mくらいの壁面ケース2面と1.2mとかの覗きケース2面しかないので、ほとんど一教派1点です。「これで教派神道を勉強するぞ」と思うと肩透かしと感じるでしょう。
しかしながら、上に書いたように毎年開催されていますから、ぜひ毎年ご覧になっていただきたいものです。