「教派神道」研究会(仮)

おおむね近代神道・神道教団について

本会(仮)主催・巡検企画「墓から見る近代神道」

教派神道」研究会(仮)では、令和6(2024)年3月1日午後に、「墓から見る近代神道」と題して巡検を企画・実施しました。
谷中霊園青山霊園などの都立霊園には、明治維新後、神式による葬儀の増加により整備された墓地であるという経緯から、国学者神道家が少なからず埋葬されていることが知られています。しかしながら、150年の歴史を重ねる中で、被葬者の相続人・親類縁者が縁遠くなり管理から手を引くケースが増えているものと思われます。また、東京都では、2000年代から「公園型霊園」として再整備するため、使用料の払われていない箇所の無縁仏への改葬が進められており、著名人の墓巡りの名所としての都立霊園もその様相を変えつつあります。国学者神道家においても例外ではなく、先には、谷中霊園において国学者・小中村清矩の墓が整理されたことが話題になりました。
そうした事情を踏まえて、1874年(明治7年)に東京府管轄の公共墓地として開設された青山霊園を会場とし、国学者神道家の墓や碑を訪ねる巡検を実施したものです。
巡検といってもお墓参りをしてその人物について語り合う程度の軽いもので、国学神道にご興味の方々約10名の参加を得ることができました。
企画者も別に詳しいわけではないテーマでしたので、参加者のなかからそれぞれの国学者神道家についてご存じの方にお話いただきました。37箇所ほどリストアップしましたが、流石に半日ではまわりきれず、後日改めて2回目の企画をしてもいいかもしれません。また、同じように谷中霊園での開催も考えておりますので、皆さまのご参加をお待ちしてます。

『宗教研究』第82回学術大会紀要特集号PDF公開

日本宗教学会の『宗教研究』第97巻別冊(第82回学術大会紀要特集号)のPDFが公開されています。

http://jpars.org/bulletin-separate_volume.html

当該大会は2023年9月8日(金)~10日(日)東京外国語大学を会場に対面開催されたものです。
リンク先のファイルをご覧いただくとお分かりになると思いますが、教派神道をふくむ近世神道・近代神道関係の発表が第5部会にまとまっていました。
いずれも大変興味深い内容で、論文化も待たれます。

教派神道関連研究が2023年度日本宗教研究諸学会連合研究奨励賞に

日本宗教研究諸学会連合というと聞いたことがあるようなないような、公式サイトによれば「日本宗教研究諸学会連合とは、2008年に設立された宗教を研究する諸学会の連合組織です(加盟学会数30団体 2016年現在)。」という組織なのですが、そこが毎年「宗教研究分野の個人・共同研究プロジェクトのうち、独創性、実現可能性、予想されるインパクトにおいて際立ったものを表彰」している研究奨励賞に、現在教派神道連合会にも加盟している大本をテーマとした研究が選ばれました。
https://jfssr.jp/?page_id=537&fbclid=IwAR3Nk9rNdfD3vlhWWaZPjhXivLrx-vU0pmQsRDiKcmcLGBSNxOz54ETG8tA_aem_AcdnQrqxcpkJ-jykG3e46DK1HwNNlmPRGWIEeSZ-_-PMBR9VmeFpjycPv1zJspbli-0
東京工業大学博士後期課程の玉置文弥氏の「アジア主義超国家主義と宗教-道院・世界紅卍字会大本教の連合運動-」です。
玉置氏の研究については以前にも本ブログで言及したことがあるはず。
玉置氏は近年、かなり精力的に研究成果を発表されてており、アジア主義超国家主義と道院・世界紅卍字会大本教について研究を大きく前進させていらっしゃいます。またその成果もいろんな賞を受賞しており、今回の受賞も宜なるかなという感想。
先日博論発表会を終えられたばかりらしいので、そのうちまとまった博論本を書店で目にすることができるでしょう!

授賞者は玉置氏のほかにもうお一方いらして、髙瀬航平氏の「公教育を巡る文部省の政策過程の検討を通じた近代日本の宗教・政治・教育の関係史研究」なのですが、こちらも大変興味深いご研究です。

お二方、おめでとうございます。

井上順孝先生文化庁長官表彰

教派神道研の成立』で知られる國學院大學名誉教授・井上順孝先生が昨年、文化庁長官表彰を受けられたとのこと。
https://www2.kokugakuin.ac.jp/oardijcc/archives/events/2023-12-18-commendation.html
教派神道研究にとどまらず、ひろく宗教文化教育や宗教リテラシー、情報化社会と宗教など、さまざまな分野でご活躍されてきました。

1月20日「海外神社をつくるー神社以前から幻の計画まで」

1月20日神奈川大学みなとみらいキャンパスにて、写真展「「神国」の残影」が2024年 1⽉10⽇(⽔) 〜 1⽉27⽇(⼟)の期間で開催されています。

これに関連して、1月20日に開催された、神奈川大学非文字資料研究センター海外神社班の研究会「海外神社をつくるー神社以前から幻の計画まで」を聴きに、神奈川大学みなとみらいキャンパスに行ってきました。
発表内容は、写真展の写真を撮影された写真家の稲宮康人さんによる「最後期の海外神社 拡大・創建・計画」と、文化庁宗務課の大澤広嗣さん「入植者の馬来半島大神宮から南方軍の昭南神社に至るまで」。
お二人のご発表はどちらも大変興味深く、特に大澤先生のご発表は神道教派の信者が深く関わった神社創建がテーマ。

昭南神社という海外神社の一をめぐって、黒住教の篤信者から解脱会の幹部、ひとのみち教団の元幹部まで出てきて、通説を厳しくただす、謎解きのような発表で大変興味深く拝聴しました。

元になった論文は↓のあたりのようです。

大澤先生はご自身の論文の多くをresearchmapで公開されてますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

マレー半島及びシンガポールにおける神社史  黒住教信者の永田弥八郎を中心に」『佛教文化学会紀要』第30号2021年10月  

https://researchmap.jp/read0155549/published_papers/33558659

解脱会の岡野武徳と日本占領下のシンガポール 昭南神社から昭南特別市経済部食品科まで」『中央学術研究所紀要』第51号 2022年11月  

https://researchmap.jp/read0155549/published_papers/40620269

「昭南神社--創建から終焉まで」『シンガポール都市論 』(アジア遊学 123) 2009年6月

 

民族文化研究会会報『大八洲』第4号

民族文化研究会会報『大八洲』第4号(2023)が12月に発行されました。同会報は、同会に申し込めば誰でもメールでPDF形式で送ってもらうことができます。

告知自体は2023年中に同会ブログにてされており、私のところにも届いておりましたが、紹介はようやく今日。

今号については、11月に同会の定例会について紹介した際に「まだかなー」と言及しており待ち侘びていたところでした。

https://kyohashinto.hatenablog.jp/entry/2023/11/15/180000

教派神道」研究会(仮)としての今号のみどころは、竹見靖秋「神々の集い――日本開顕同盟と日本宗教政治連盟」でしょうか。同氏の定例研究会での報告をもとにしたご論文で、戦後神社本庁が中心となり様々な教団を取り込んで始めた政治活動について詳細に紹介するものです。この二つの組織は「神社本庁外の神道系教団史を考える上でも」「重要」としていて、たしかにその価値がありそうです。

同氏の連載「祭神論争の過程」も第3回をむかえ急展開ですし、その他の記事も興味深いのでぜひこの機会にご覧ください。

『井上正鐡研究会年報』第28号

『井上正鐡研究会年報』第28号が発行され、代表である荻原稔さんのresearchmapのページで公開されています。

https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/231057/423ef47317e117854083ca46caf6f443?frame_id=794408

30年近く毎年発行されている年報ですが、今号でも「新出史料」の紹介があり目を惹きます。

門中・教会の現在に迫る「鐸声残響」では、神社と教会所という「神道」の施設に関して興味深い史料が提示されています。

1年間の井上正鐵・門中に関する研究成果を振り返るコーナーでは、荻原さんによる研究ノート「戦後の禊教における高浜伝十種神宝御法の受容」『國學院大學研究開発推進機構日本文化研究所年報』第 16 号(2023.9)が紹介されていてこちらも興味深いです。

また、連載中の用語集に続く「門中人名集」や、井上正鐵著作集なども予告されていて、今後がさらに楽しみ。

ぜひダウンロードしてご覧いただきたい。