以前にもこのブログで刊行予告を紹介していた、斯界の重要先行研究の増補版、井上順孝『増補教派神道の形成』(法藏館、2026)が、今月上旬に刊行されています。一昨日、大きな書店に足を運ぶことができたので、ようやく手に取ることができました。店頭では刊行直後の待望の名著復刊ということもあり、面陳されて何冊もならんでいました。著者ご本人もホームページで仰っていましたが、出版社Webサイトの画像と実際の書影はちょっと印象が違いましたね。
もとは1991年に刊行された著者の博士論文である本書は、従来の教派神道研究で中心的に捉えられがちであった天理教や金光教などの民衆宗教を樹木型モデルとしてとらえ、それに対して近代宗教行政の所産として形成された神道修成派や神習教などを様々なものを受容する容れ物のような高杯型モデルとしてそれぞれ教団の形成原理を提示しました。教派神道研究における基本であり重要な先行研究といえます。
そんな本書が長く入手困難であった35年の月日を経て今回復刊されたのは大変意義深いことです。教派神道全体の捉え方、形成原理など、基本的に押さえておくべき視点を学ぶ必須の書です。また、この10年ほどだけとっても、大谷正幸さんの富士信仰研究のなかの富士講系教派神道や藤井麻央さんの金光教・黒住教の教団形成研究、武田幸也さんの神宮教研究などなど、個別の教派では多くの成果が出ています。それに対して本書がケースとして取り上げた神習教、神理教、神道修成派などはその後大きく研究が進展したとはいえないと思います。これらの教派について改めて学ぶためにも本書には今なお大きな価値があることでしょう。
さらに本書の価値を高からしめているのは「補遺 教派神道研究の動向」という一章でしょう。戦前の体制から一転してアイデンティティを問われる教派神道のあり方をどのような視点から研究していくのか、近年の研究にも触れつつ示されています。時代的展開・地方的展開などいくつかの視点が提示されていて、教派神道のアイデンティティ、神葬祭、情報化社会など、以前にも「二十一世紀の教派神道」『國學院大學研究開発推進機構紀要』第5号(2013)でお話しされていたものも含まれます。以前は教団の活動への提言という形でしたが、今回は改めて研究上のテーマということで、新たに位置付けられています。いくつかは当ブログ管理人も以前からテーマとして研究しなければいけないと思っていたもので、我が意を得たりの思いです(読者にそう思わせるのがプロの書き手でもあります)。
税込13,200円は相当気合いの入った方しか手を出しづらいのではないかとも思いますが、気合を入れるか、お近くの図書館にリクエストするなどしてお手にとってみてはいかがでしょうか。
最後に本書から、今後の教派神道研究について示された「深く掘り下げる」方向性についてのコメントを引用して終わります。教派神道研究会(仮)はまさにそういうことを志向しているので、こうしたあり方でよいんだなと思いました。著者は全く違う誰か達のことを想定しているんだろうけど。
深く掘り下げるには、研究者同士の協力が不可欠だが、これについては少しずつ研究の輪も広がっているので、実証的な研究を続けている若い世代には大いに期待している。
「増補版あとがき」井上順孝『増補 教派神道の形成』(法藏館、2026)






